ホーム お知らせ ■FSMS News2022-3■腸管出血性大腸菌 ■FSMS News2022-3■腸管出血性大腸菌 2022/10/07 ■ FSMS News 2022-3 ■━━━━━━━━━━ 2022年10月7日■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆ 腸管出血性大腸菌 ◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 朝夕と肌寒い季節になってきました。気候はすっかり秋めいてきて います。 秋は、食べ物が美味しくて、つい食べ過ぎてしまうなんて方も いらっしゃるのではないでしょうか。 そんな食欲の秋は、より食中毒に気を付けなければなりません。 どうも、ISO審査登録センター食品安全審査室メルマガ担当です。 突然ですが、2012年北海道札幌市のある食品会社の浅漬け製品で 起きた食中毒事故をご存知でしょうか。 食中毒の原因は、衛生管理(殺菌工程等)の不十分が招いた、腸管 出血性大腸菌O157(オーイチゴーナナ)によるものです。被害者数 は169名、死者数は8名にもなる悲惨な事故となってしまいました。 さて、今回のテーマは、そんなこわいこわい食中毒菌「腸管出血性 大腸菌」についてです。 【大腸菌ってなに?】 大腸菌は、健康なヒトの大腸内で生息し、また環境中にも広く分布 している微生物ですが、腸管出血性大腸菌O157(オーイチゴーナナ) などのように、 ある種の大腸菌はヒトに下痢、腹痛などといった病気を起こします。 このような、胃腸炎を起こす大腸菌を“病原大腸菌”あるいは下痢 原性大腸菌と呼ばれています。 現在、病原大腸菌は、「腸管出血性大腸菌」を含め5種類知られて います。 【腸管出血性大腸菌ってなに?】 この病原大腸菌は、血液が混じった下痢を起こすことから、腸管出 血性大腸菌と呼ばれます。腸管出血性大腸菌は血清型で分類され、 代表的なものに、O(オー)157、同じくO26、O111などがあります。 重症化するものの多くはO157(オーイチゴーナナ)です。 腸管出血性大腸菌が世界的に注目されたきっかけは、1982年に米国 のオレゴン州とミシガン州で発生したハンバーガー食中毒事件です。 真っ赤な下痢便から今では有名なO157(オーイチゴーナナ)が検出 されました。 【腸管出血性大腸菌はどこからやってくるの?】 腸管出血性大腸菌は人や家畜(家畜では症状を出さないことが多い) など様々な生物が保菌している可能性があり、保菌している生物の 排せつ物や手指などから汚染されたものを口にすることで感染します。 感染力が強く、通常の細菌性食中毒では細菌を100万個単位で摂取し ないと感染しないのに対し、わずか100個程度の菌数の摂取で発症す るといわれています。 また、腸管出血性大腸菌は酸に強い抵抗性を示すので、胃酸の中でも 生残することができます。 【腸管出血性大腸菌が体に入るとどうなるの?】 腸管出血性大腸菌は接着作用によって大腸に定着し、'ベロ毒素'と 呼ばれる強い毒素を放出して腸管が水分を吸収できなくしたり血管を 破壊したりします。 【腸管出血性大腸菌の症状ってどれくらい危険なの?】 症状は、腹痛と水様性の下痢で発症し、翌日に血便を呈することが 多いです。おう吐は少なく、発熱は37℃台と軽度です。潜伏期間は、 一般的に3~5日ですが感染後10日以降発症した例もあります。 平均8日で回復するとされていますが、一部(有症者の6 〜7%)の患者 ではHUS(溶血性尿毒症症候群)といわれる腎臓などの障害を引き起こ し重症化・遷延して死亡する(HUS を発症した患者の致死率は1〜5%) こともあります。 特に小児や高齢者はHUSを発症する割合が比較的高く、重症化しやすい 為、とても危険です。 【腸管出血性大腸菌の対策は?】 ・予防のポイントは食べ物の取り扱いと正しい手指衛生です。 汚染食品からの感染が主体であることから、食品を十分加熱し、 調理後の食品はなるべく食べきる等の注意が基本です。 ・ヒトからヒトへの二次感染を予防するために、食事前、トイレ使用後 などには石けんと流水による手洗いを行うことが必要です。 手指衛生のためにアルコール性の擦式消毒剤を追加使用するのも有効 です。 ・トイレなど菌に汚染した可能性のある場所は、アルコールなどの消毒 薬等を用いて、適切に消毒することが肝要です。 ・調理器具は用途別に分け、十分に洗浄、殺菌するようにしましょう。 ・水も汚染の原因になる可能性があります。井戸水を使用している場合 は、定期的に水質検査を実施することも重要です。 【腸管出血性大腸菌による食中毒事例は?】 2014年静岡県花火大会の出店にて「冷やしキュウリ」で起きた集団食中 毒では、被害人数は、少なくても500名以上、そのうち入院者数は114名 にもなりました。 原因は、「冷やしキュウリ」の衛生管理の不十分による腸管出血性大腸菌 O157(オーイチゴーナナ)によるものです。 その他、1996年に大阪府堺市の学校給食などで児童ら9千人以上が感染し た腸管出血性大腸菌O157(オーイチゴーナナ)による集団食中毒では、 当時小1で発症した女性(25)が後遺症の腎性高血圧を原因とした脳出血 で死亡する等、後遺症により約20年後に死亡した事例もあります。 【腸管出血性大腸菌の感染拡大への規制は?】 国内では、腸管出血性大腸菌感染症は、「感染症の予防及び感染症の患者 に対する医療に関する法律(感染症法)」にて、三類感染症に位置づけら れています。 対応する措置としては、飲食物を取扱う業務への就業制限、消毒等があり ます。 また、学校保健安全法では第三種の感染症に指定されています。 皆様、「腸管出血性大腸菌」についていかがだったでしょうか。 上記はあくまで参考情報にすぎません。企業毎の状況、リスクに合わせて 適切な予防管理体制を構築することが重要になります。 この配信の情報が、皆様の食品安全の情報源として、少しでもお役に立て れば幸いでございます。 前へ 一覧へ戻る 次へ